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zoom RSS 人を励ます謙遜(けんそん)の言葉

<<   作成日時 : 2008/09/30 22:36   >>

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けんそんの言葉・・・・・
1994年に死去された森滝市郎氏(広島大学名誉教授)は世界的に知られた著名な平和運動家である。彼は冷戦時代、米ソの核実験や戦争に抗議して、広島平和公園で座り込ながら、自らの被爆体験を語り、核廃絶のために全力を尽くされた生き方は、被爆都市ヒロシマの象徴でもあり広島市民の誇りでもあった。
 
あるとき私は、森滝市郎さんの講演を友人の碓井真行氏(光明寺住職、画家)のお寺で聞くことがあった。彼の話は実に生々しく、原爆炸裂で目にガラスの破片が突き刺さったときの被爆体験を語られながら、人間の教訓として、「人間ほど愚かな存在はいない。馬鹿と言ってもこれほど馬鹿な存在はいない。」と話をされ、私は大きな感銘を受けた。そこで講演会のあと、「先生!すごかったです。素晴らしいお話しで、とても感動しました。」と感謝すると、森滝さんは、私の方をじっと見たあと、「私がすごいんじゃあないよ。あんたの耳がすごいんだよ。と謙遜されて答えられたのであった。

それを聞いて私は「あんたの耳がすごい」と指摘されたことに思わず嬉しくなった。誉めたつもりだったのに、誉められたのだ。これは悪い気持ちはしない。でもよく考えてみると、森滝さんは「わたしのつまらない話でも、そのように ”すごい”と 聞くことができるのは、あなたが持っている耳(問題意識)がすごいんだよ。」と謙遜的に答えながらも、若者を激励されるその姿勢に感動したのだった。

なるほど、考えてみれば、だれかの話を10人が聞いたとしても、全員みな異なった印象や異なった感動を受ける。みんなそれぞれの問題や興味の持ち方が異なるからだ。おそらくキリストがしゃべった言葉や、仏陀がしゃべった言葉でも同じことであったろう。そのため、聞く耳によって、すべて違う解釈が歴史の中で生まれてきているのだから。とにかくこのときの体験から、「なるほど森滝さんは、受け方ひとつでも違うなあ。素晴らしい。」と改めて感動したものであった。

そこで、それからというもの、私も講演を依頼されたとき、講演終了後によく同じような、聴衆者から賛辞をいただくことがあった。そこで、森滝さんから学んだ言葉を使わせていただくことにして、「いえ、私の話しや体験が素晴らしいのではありません。あなたの耳が素晴らしいのですよ。」と・・・・・・・(笑) 
・・・こうやってこれまで、たびたびこの効果的な謙遜の言葉を使わせていただいたが、そのうち私はハッと気がついた。「もしかしたら森滝さんも、この言葉を、自分で生み出されたというよりも、どなたかが使われた言葉を使用されていたのかも?・・・」と考えるに至った。

「そうだ!それに違いない!・・・・恐らくこの謙遜の言葉の話は、ひょっとしたら、誰かから誰かへと、長い間伝承されてきたのかもしれない」」と思った。そうだ。・・・感動したことは、なんでも人の心の中に積もり積もっていく。そしていつしか、その感動の積もりの中から、自分の言葉を生み出して、使い始める。そう!おそらく人間は、長い間、そうやって何千年、何万年も「言葉」や「こころ」を伝承してきたに違いない。ほんとに簡単な謙遜の言葉であり、魔法的な言葉ー「あなたの耳がすごいんだよ」 

ひょっとすると、これは、人類が対話を始め頃に生み出した知恵かもしれませんね。聞くことが難しい時代になっているだけに、こうしたことを痛切に感じるこの頃です。森滝先生、ありがとうございました。

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