国際識字文化センター (ICLC)

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zoom RSS 現代の深刻な課題と国際識字文化センター(ICLC)について

<<   作成日時 : 2011/07/10 06:57   >>

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国際識字文化センター(ICLC) は、21世紀が抱えている最も深刻な課題に向けて、教育や文化の領域をより広く、深く、人間的な空間としてとらえながら、グ ローバルな実践を通じて世界全体の幸せにかかわっていくことを目的として、1997年5月、5カ国(日本、インド、韓国、中国、米国)の有志によって国際NGOとして東京に設立されたものです。
ある意味では、「世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」という究極の幸せを求めて表現活動を行う国境を越えた団体ともいえまます。ICLCを担っているのは、主にアジア・太平洋地域のユネスコ・ユニセフ・人権・環境・教育・文化などの分野で、国境を越えて幅広い実践を行ってきた専門家集団です。21世紀文明が内外から崩壊の危機に瀕している現在、ICLCでは、「人間性の尊厳を確立するヒューマン・リテラシー」を確立しようと、教育・文化・コミュニケーションを通じてさまざまな活動が行われています。行動やネットワークは、アジア地域をはじめ全世界に広がっていますが、むしろ事業の拡大よりも豊かな「ひと」の生き方や「心の眼」を創り出していくことを重要な目的としています。

2011年3月11日の津波と原発の被災以降、人間の生き方は最大の危機を迎えています。つまり膨大な放射能汚染が、現代の子どもたちや大人たちの細胞を破壊し続けているのです。これは前から指摘し続けてきたことですが、現在は、原発の事故によって、あるいは稼動によって、地球に生きるすべての生き物は、大気、土地、河川や海洋などの水などの環境すべてが破壊され続けているのです。こうした状況は福島だけにとどまらず、世界全体で進行していることですが、しかしこれはほんの始まりに過ぎません。人間の文明は、物の繁栄を求めるためには、限界のない欲望をむき出しにしているのです。





これまでにも人間の幸せを脅かす核の脅威は、さまざまな形で存在しています。1998年5月、パキスタンの農村地域でノンフォーマル学校を二百校設立する式典に出席した時、私は、教育大臣の口から次のような祝辞を聞きました。「今日、我が国には10数人のカディール・カーン博士のような科学者が存在している。識字教育は核開発など科学技術の発展に大きく貢献するものである。学校が増え識字率が向上することによって、我が国の核開発がますます進展していくことを希望する。云々」私はこれを聞いて怒りが込み上げてきました。


カーン氏とはパキスタンの原爆開発の父とも言われる著名な科学者。もし識字が核開発のような目的のために使われるものならば、その識字は完全に間違っている。そして、咄嗟に私は教育大臣が発言した識字に関し、ヒューマン・リテラシーという新しい概念を考えついたのです。「識字は哲学や方向性を持たなければならない。識字教育とはただ単に読み書き計算ができるかどうかの技術能力の問題ではなく、豊かな人間性を有し、普遍的な目的や内容をめざすものでなくてはならない。人を不幸にし、人を殺す識字がこれまでの歴史でどれだけ推進されてきたことか、そしてそれは現在も続いている。文字によって表現される知識や技術は、人間のありかた全体に真摯なる責任をもたなければならない。識字とは人を生かし、争いをなくし、人間同士が信頼できる世界をつくるためにこそ存在する。」そう考えて、ひるがえって日本や世界の現実を考えるとき、現在の文字や知識や情報技術は人々が果たして幸せになるように使われているであろうかと思えました。



式典が終了し帰宅した日の夕方、パキスタンがインドに対抗して初の原爆実験をチャガイ丘陵で行ったという知らせを聞いたのです。フランスの哲学者のシモーヌ・ヴェイユは、「不幸な人間に対しては、注意深くあり−どこかお苦しいのですか?と問いかけられる力を持てるかどうかに、人間らしい資質がかかっている」と言っていますが、その問いかけはヒューマン・リテラシーの出発点で立脚点でももあります。ICLCは「どこがお苦しいですかと問いかけられる力を養うともに、その苦しみの軽減のための具体的な実践を歩みだしたいと願っています。なぜなら人間は、時と状況が異なればだれしも苦しみや悩みの環境に追いやられる存在だからです。ヒューマン・リテラシーのヒューマンとは、言葉での人間存在を意味するのではなく、なによりも人間的な行為や実践を実践していくなかで初めて獲得する言葉を目ざしているのです。



すべての子どもたちに教育と本を読む喜びを!

1.社会的に最も恵まれない子どもたちに「キラン図書館」

 キラン図書館(ウルドゥー語で太陽の光)は、社会的に最も恵まれない環境にいる子どもたち(10〜18歳)を対象に設置された子ども図書館です。世界の国々では、多数の子どもたちが刑務所に収容されていますが、彼らは貧しい家庭や腐敗した社会環境の中で、幼少時から多種多様な犯罪に追いやられています。大人たちの犯罪を弱い立場の子どもに被せている場合さえあります。子どもたちは再起するために知識や情報や技術を渇望しており、ICLCは2000年からパキスタンのアディアラ刑務所、2001年ムルタン女性刑務所、2004年ファイサラバード刑務所、2006年ペシャワール刑務所に4館のキラン図書館を設置しました。




そして少数民族のカラーシャの子どもには、わだ晶子さんによって2006年にキラン図書館が設置されています。これらは、東外大名誉教授の故鈴木斌先生や美穂子基金など多数の人々の寄付でまかなわれています。ミャンマーのヤンゴンやピイ市にも3館のキラン図書館が設立されています。またICLCは、図書館活動だけでなく無実の子どもを助けるために、弁護士を交えた人権委員会の設置もすすめていますが、2008年には冤罪の子どもと死刑を求刑された姉妹を牢獄から釈放することができあmした。将来的にはこの活動を近隣諸国や中東・アフリカ地域にも広げ、キラン図書館を通じて子どもの学ぶ権利や子どもたちの人権のために活動していきたいと考えています。

http://worldtv.com/iclc_world_tv/ (ICLCテレビ)

子どもたちの声を聞いて!

2. 平和絵本の共同出版プロジェクト

 この絵本は、21世紀を生きる子どもたちを対象に平和や連帯の心を育もうと、パキスタン・ インドの絵本作家などが共同で1998年から企画・編集作業が開始されました。そのきっかけは、印パの核実験やカシミールをめぐっての国境紛争ですが、こうした深刻な状況は世界各地で起きており、「大人の憎しみが子どもの心を形成」しているのです。「戦いよりも平和を!21世紀の文明間の衝突を起こさない!」を合言葉に各国のICLCの専門家が知恵を絞っているものです。

第1回平和絵本編集会議は2001年に東京で、インド、パキスタン、中国、米国、日本など5カ国からの専門家が出席し開催されました。第2回は2004年に国際交流基金とユニセフの協力でネパールのカトマンドゥーにて、インド、パキスタン、ネパールなど4カ国16名の専門家が共同討議を行いました。「Listen To Me!」(私たちの声を聞いて!)と題名がつけられたこの絵本は、2011年現在、インドのニュデリーで共同編集が続いており、今年中にはデリーの出版社から、まず英語版で出版される予定です。各国はこの版をもとに多様な言葉に翻訳し普及する予定です。「また今後はアフリカ、パレスチナ、北東アジアでのテーマ別の共同事業にも取り組む予定です。」



紙漉きが切り開いた持続可能な創造性

3. 自由な表現活動と自立を求めて

紙漉きのアイデアは、貧しい農村の子どもたちが、記録するためにノートが欲しいと言ったことから始まりました。そうした要請に、紙やノートなど現物そのものを送るのではなく、紙の作り方を教えて人々が持続できうる力や技術をもつことが必要ではないかと考えたからです。約2000年前に発明された紙は、人間の文明の中で大きな役割を果たしてきました。

紙は草木の繊維(バナナやカヤなど)を利用すれば誰でも簡単に作れますが、その実際の作り方や多様な利用方法はよく知られてはいません。そこでこうしたアイデアを使って村おこしやNGOの強化のために活用しようと、ICLCはこれまでのさまざまな協力活動を行ってきました。パキスタンの少数民族カラーシャの村、多数のNGOや芸術大学、青少年刑務所、ラオスの山村、タイのカレン族の難民キャンプ、パレスチナのオリーブの葉、南インドのダリット(最下層カースト)女性の自立、韓国での一般の人々などを対象に現代の環境問題や社会問題と深く関りながら、人々の自立活動を支援しています。

人生や社会を自分の力でデザインすること

4.絵地図分析の無限の魅力と可能性

絵地図分析(PMA)とは、「文字と絵とデザインで深層心理を表現し、できあがった絵地図と対話しながら人生戦略をたてる教育プログラム]です。これは個人でもグループでも使えますが、二つの大きな効果があります。一つは内面にある苦しみや悩みを絵地図に昇華させるので、集中力や高揚感と共に自己の解放感がもたらされること。もう一つは、絵地図を詳細に分析することによって、羅針盤となる自分についての具体的な生き方を得られることです。


これは長年のICLCの識字活動をもとに開発した世界でもユニークな実践的教育学で、絶壁に追い込まれて呻吟している現代の子どもや大人たちを対象に、言葉と絵の力を用いて、問題解決のための行動に向けて自信を持てるようにすることが最大の目的です。ワークショップは、それぞれの体験とイメージで具体的な心の地図をつくるので非常に刺激的でおもしろいものです。これまで日本国内や海外で小中学校の教師や生徒などを対象に多数のワークショップを開催しています。現在は、福島県いわき市で、原発で被災した子どもや大人たちが直面している精神的なケアのための絵地図ワークショップを行っています。今後、専門家養成コースも開始する予定です。





 <絵地図ワークショップの感想>
ーぼくの絵地図ができたときに体の力がぬけてらくになった。(小6年男子)
ー今までに味わったことのない感覚を体験しました。自分のいいところや悪いところがどんどん見えてくるような気がしてどんどん手がうごきました。とっても不思議な感覚で、自分自身のことをよくわかれるようになれた気がしました。(小6年女子)
―絵地図をやっているうちに自分の好きな事やショックな事がたくさんうかんできて、今の自分は一体なんだろうかと思いました。全体をながめていたら、自分の目標が少ない事に気がつき、これからは目標をどんどん増やしていきたいと思いました。(小6年男子)
―今まで、自分のことについていろいろ書き出すということがなかったので、とても貴重な体験でした。一度書き始めるとどんどん夢が広がっていきました。10年後にこれを見て、どんなことを考えるのかなあと想像するのも楽しかったです。 (中1女子)
―子どもと一緒に話し合い、それを絵で視覚化して地図にすることによって、私も子どももたくさんのことを知ることができました。何よりも、子どもが何を欲しがっているのかを知るきっかけになったことが一番よかったと思います。(母子で参加)


深刻な環境問題に向けてリテラシーのできること

5.パキスタンの水俣ともいえるカスール市の環境破壊


パキスタンの北部カスール市で製造されているなめし革は、イタリアや日本にも輸出され国の重要な輸出品目になっていますが、六価クロムという猛毒の化学薬品を使った処理によって大気や水質が汚染され、地域の約15万人が健康への被害に直面しています。1980年代初頭からなめし革産業の規模は拡大しましたが、余った革の焼却処理による大気汚染や汚染処理されていない下水排水のため安全な飲み水の環境が完全に失われ、1993年には、5〜6万人ともいわれる住民が肺がんや肝臓疾患などで苦しみ、今なお住民の60%が健康を蝕まれています。ICLCはカスールの子どもを中心に身近な環境で何が起こっているのか、ポスターの製作協力や、環境汚染を理解する識字教育やろ過装置の開発協力にも協力しながら、目に見えず因果関係を簡単に説明できない深刻な環境問題を人々にどう伝えていくか、特に文字の読み書きのできない人々を念頭に、環境と識字教育のあり方を紙芝居、創作、絵本、演劇など多様な表現活動を通じて、どのように実践するか挑戦を続けています。

ことばや文字の表現による可能性を求めて

6. 文学と識字活動を結ぶ多様な表現活動

「豊かな想像力が表現する文学の可能性とは・・・2001年、東西両ドイツの統一を記念して、ベルリンで第1回国際文学祭が、全世界から約70名の作家を招聘して開催されました。ICLC代表も招聘を受け自作の3作品がドイツの舞台俳優によって朗読されました。2003年のアフリカ文学祭では21名の作家が招請を受け、作家同士の討議や学校の生徒との対話を通して、「社会の厳しい現実や切実な体験を文学でどう表現するか?」というテーマで、国民の10%以上がHIVに感染しているという南アフリカで真剣な討議が行われました。

2001年には、パキスタンとアフガニスタン難民キャンプの子どもたちによって、「キラン図書館」、「青い空の下―地雷で足を失くしたアフガンの子ども」の舞台劇が、イスラマバードの国立図書館ホールで行われました。また多様な紙芝居や識字絵本などが共同で製作されています。2004年には、音楽と語り「コンキチ」が、音楽は劉宏軍(中国)、語りは林洋子によって、東京、京都、広島などで開催されました。韓国のナミソムで開催されている世界青少年文化祭にも参加しており、人間社会をテーマに、ICLCは「ことば」を通じて多様な表現活動を行っています。2007年には、世界的に著名な画家のA.ラマチャンドラン(インド)を招請して、原画展や講演会を行いました。



「ワークショップ」と「識字講座」の開催
「ワークショップ」
第1回:「人間的な教育環境とリテラシーを求めてーパキスタンでの3年半の識字活動報告」
第2回:「識字教育と人間的な自立を求めてーアジア地域での識字活動の現在」
第3回 「アジアの環境問題と識字教育―創造的な識字教育を推進するNGO活動」
第4回:「文学と識字」第1回ベルリン国際文学祭の報告
第5回:「アフガン難民の子どもたちと識字教育の可能性」
第6回:「多文化社会における識字教育と環境問題への挑戦」
第7回:「平和な人間環境を形成するための識字とは?」
第8回:「塀の中の子どもを救え!」キラン・ライブラリープロジェクトの課題
第9回:「ICLCの活動報告会とセミナー」
第10回:現代アジアの子どもが直面する現実―ICLCと各国との国際協力活動

「識字講座」
第1回:「豊かな民族文化 ラオス・モン族の人々の暮らしから」講師:安井清子
第2回:「語り継ぐ文化―カラーシャの谷に息づく希望」      講師:わだ晶子
第3回:「日本の識字を考える」(寿識字教室) 講師:大沢敏郎 
第4回:「インドの子どもの生きる現実」 講師:ヴァルシャ.ダス (インド)
第5回:「ダリット(最下層カースト)女性の文化活動」 講師:黒川妙子
第6回:インドの視覚芸術」 講師:A.ラマチャンドラン


「組織とネットワーク」http://www.iclc2001.org/
ICLCの組織は、活動の趣旨に賛同する個人会員と団体会員で構成されており、各国の多数の
専門家たちの協力を得ながら活動を行っています。本部事務局は東京におかれ、現在それぞれの事業の実施責任団体として、パキスタンにはイスラマバード識字文化センター(Islamabad Center for Literacy and Culture, Pakistan (ICLCP)、インドにはシャクティセンター(Sakthi Center)、韓国にはICLC韓国委員会、ミャンマーにはICLCミャンマー委員会などがあり、本部事務局との綿密な連携により、諸事業を展開しています。財政的には、会員の会費と寄付を主要なものとし、必要な事業に応じて国際交流基金やその他NPO、企業、公共団体、民間ボランティア組織などの支援によっています。
 http://iclc.at.webry.info/  mail: iclc@iclc2001.org

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